企業革新のためのビジネスシステムプランニング手法の研究

1.要旨  2.緒言  3.研究方法

4.結果  5.参考文献

 

1.要旨  戻る

ここでは、業務改革・業務改善の方法論を研究しています。特徴は,経営環境から経営戦略、業務構造、まで一貫して検討する方法論を整理した点です。この方法論をビジネスシステムプランニング技法と呼ぶことにします。

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2.緒言  戻る

 ここでの検討は,経営改革手法の発展の経緯を以下のように整理して、その発展経緯に続くものとしてビジネスシステムプランニング技法を位置づけています。

  1. M.ポーターが提唱した,企業を付加価値創造の一連のつながりとしてとらえる考え方
  2. 情報システム革新手法が用いる企業を業務機能のつながりあったものとしてとらえる考え方
  3. M.ハマーらが提唱した業務改革において一連の業務を一括して設計し直す考え方

 情報システム革新手法、M.ポーター、M.ハマーらの提唱する考え方は体系だったもので、理論としての完成度は高いと考えます。しかし、これらの理論をもとに行われた経営戦略の策定や業務革新は必ずしも成功を収めていません。ビジネスシステムプランニング技法では、経営戦略、業務革新等を成功に導く要因として成果を具体的に表現するという点に着目しました。具体的でなくては関与者の理解が十分に得られず、構想を実現できないからです。

 従来の方法論で具体性を重視してきたものには,作業工程を精緻に時間軸に沿って描き出す手法がありました(ここでは、この手法を工程フロー分析手法と呼ぶことにします)。この手法は事務作業の改善等に用いられてきました。この手法は具体的である反面、分析作業の工数が膨大になる点と、現状の枠から逃れられない点でデメリットがありました。 ビジネスシステムプランニング技法は、これら問題への対策を取り入れたものです。対策として取り入れた点は以下の2点です。

  1. 成果物は業務や作業を時間軸にそって描く。
  2. 抽象的な業務機能を整理枠として用いる方法と時間軸による整理法を使い分ける。

3.研究方法  戻る

 ビジネスシステムプランニング技法を整理するに当たっては、情報システム革新手法の問題点を洗い出し、理論的根拠としてM.ポーター[1],M.ハマー[2]の経営理論を十分に検討しました。また比較の対象として工程フロー分析の手法[3]を検討しました。

3.1情報システム革新手法の問題点

 情報システム革新手法はシステムエンジニアリング系のコンサルティングで広く用いられている手法です。ここで取り上げる情報システム革新手法は構造化情報システム設計技法の流れをくむもので,情報システムの機能という捉え方を業務の機能という考え方に拡張して用いています。 情報システム革新手法では,企業を業務機能のつながりあったものとしてとらえ,機能間の情報の流れを分析することを重視しています。この手法は分析に要する工数を短縮し,情報システムの機能設計にスムーズにリンクできる点で優れています。しかし,情報システム書く新手法が重視する機能による整理には以下の2つの問題点があります。

  1. 分析が抽象的で分析担当者が問題点を把握しにくい。
  2. 新業務を設計した後の導入時に業務担当者の理解を得にくい。

3.2M.ポーターの経営理論

 M.ポーターは,企業活動を付加価値を生み出していく一連の過程としてとらえ,その枠組みをもとに企業戦略を分析する方法論を提唱しています。

3.3M.ハマーの経営理論

 M.ハマーは、「現状改善型の方法論は,成熟した産業分野における大幅な業務の改革には不十分である」とし,「大幅な業務改革には過去の業務にとらわれない,ゼロベースの業務の設計が必要である」としています。

3.4工程分析手法

 工程分析手法は,現状の業務を時間軸に沿って精緻に描き出した上で問題点を見つけていくのが特徴です。日本能率協会や産能大学等が事務作業の分析及び改善のための手法として提唱し,実績を納めてきました。この手法の問題点は分析作業に工数がかかること,現状の枠から逃れた大幅な改革がしにくい点などです。 ビジネスシステムプランニング技法は以上4つの方法論の比較研究をもとに業務革新手法を再整理したものです。

4.結果  戻る

4.1ビジネスシステムプランニング技法の特色

ビジネスシステムプランニング技法は,分析と設計の二つのフェーズからなり,それぞれのフェーズに3つづつのステップを持っています。手順全体を分析と設計に分ける点は情報システム革新手法と同じです。情報システム革新手法は、はじめに現状の業務を分析し、一段抽象的なレベルで機能のつながりのフレムワークを作ります。そして、その抽象的なフレームワークをベースに新しい業務を設計することで現状にとらわれない新しい業務の設計が行えるとしています。また、 情報システム革新手法では、戦略レベル、業務レベル、作業レベルなど、企業活動をすべてのレベルにおいて業務を機能のつながりとして描き、上位のレベルから下位のレベルに移る際には機能を詳細化する手法を用います。ビジネスシステムプランニング技法は情報システム革新手法と以下の2点で異なっています。

  1. 共通フレームワークを機能ではなく一連の業務・作業の流れとした点。
  2. 分析フェーズと設計フェーズで別の手法を用いる点。

 一連の流れをフレームワークとしながら現状にとらわれない新しい業務・作業の設計が行えるのは、共通フレームワークが相対的に一段抽象的なレベルで設定されるからです。この点は情報システム革新手法と共通ととらえることができます。

 情報システム革新手法で描かれた機能のつながりは実際に行われる業務・作業とは一致しておらず、業務革新、業務改善を実現して行くまでには具体化にはいくつかのステップを必要としました。これに対し、ビジネスシステムプランニング技法では一つ一つのレベルを一連の業務の流れとして明確にすることで成果物を具体的にします。具体的にすることで、策定・設計した戦略や業務の実現性が高くなります。

 情報システム革新手法では企業の構造を情報と機能、実体で定義できるとしています。しかし、時間軸に沿った整理が欠落しているため、実際の業務改革、業務改善の担当者には理解しにくいものです。実務の担当者にとって仕事は時間軸に沿って流れていくものだからです。今回まとめたビジネスシステムプランニング技法は担当者の理解のしやすさに重きを置いています。

 実際に分析、設計を進める際には、ビジネスシステムプランニング技法は,各ステップにおいて機能のつながりや情報の流れを中心とした考え方と、業務や作業の流れを中心とした考え方を状況に応じて使い分けます。現状にとらわれない発想が重要な場合には機能で見た整理を行い、現状を改善するだけで十分な場合は、業務を一連の流れと見て整理します。

 ビジネスシステムプランニング技法は、戦略や業務を策定・設計する方法論として最適手順を提示するのでなく、手順のうちいくつかを省略した場合の、得られるメリットと生じるデメリットを明確にすることも重視しています。

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図1ビジネスシステムプランニング技法の全体モデル

 

4.2ビジネスシステムプランニング技法と他手法の関係0

 以上を検討するにあたっては、はじめに、以下に示すように情報システム革新手法と工程フロー分析手法の比較検討を行い、それぞれのメリット、デメリットを整理しました。

 表1 手法の比較

 

情報システム革新手法

工程フロー分析手法

考え方

機能のつながり・情報の流れ

業務・作業の流れ

メリット

分析作業の工数が少ない
発想の自由度が高い
課題の整理がしやすい
情報システムの開発が容易

業務担当者の理解が容易
現状の問題点が見つけやすい

デメリット

業務担当者の理解が得にくい
現状の問題点を見落としやすい

分析作業の工数が多い
現状の枠組みにとらわれやすい
課題の整理がしにくい
情報システムの開発につながりにくい 

 

 この比較整理を通じて機能・情報を中心に考える情報システム革新手法は分析工数を節約でき,情報システムへのリンクが容易となる反面,業務や作業の流れを中心に考える工程フロー分析手法に比べ業務担当者の理解が得にくいという問題を持っていることを明らかにすることができました。反対に、工程フロー分析手法は,業務担当者の理解が得やすい反面,分析作業に工数がかかり,現状改善に終始しやすいという欠点を持っていることも明らかにしました。

 上記のメリットの統合と、デメリット最小化に当たってはM.ポーターとM.ハマーの経営理論よりヒントを得ました。

 以下に情報システム革新手法,M.ポーター,M.ハマー,工程フロー分析手法の関係について述べます。

 情報システム革新手法は企業活動をすべての階層に置いて機能のつながりととらえます。これは、企業のあるべき戦略・業務を描く際に些末な現実に固執せず、抽象化したレベルで整理を行い、効率的は現状把握と現状にとらわれない新業務の設計のために有効な手法です。

 M.ポーターは企業戦略のレベルに置いて,企業活動を一連の業務活動の総体としてとらえる考え方を提示しています。しかし、M.ポーターは具体化の重要性については特に述べていません。

 M.ハマーは業務改革のレベルにおいて企業活動をいくつかの一連の業務活動の流れの集合体としてとらえる考え方を提示しています。M.ハマーも具体性の重要さには特に言及していません。

工 程フロー分析手法は作業のレベルに置いて企業活動を時間軸をもとに一連の流れとして整理する手法です。工程フロー分析手法は徹底して具体性を追求するところに特色があります。

上記の整理をとおして,情報システム革新手法はすべての階層において機能・情報の流れという考え方を用い,M.ポーター,M.ハマー,工程分析手法はそれぞれの階層に置いて業務・作業の流れという考え方を用いていることを発見しました。

以上4つの考え方とビジネスシステムプランニング技法の考え方の関係を以下の図に整理します。

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5.参考文献0戻る

[1]マイケル・ポーター,競争優位の戦略,(1985年)
[2]マイケル・ハマー,リエンジニアリング革命(1993年)
[3]富永 章,BPRの方法論をリエンジニアリング,日経情報ストラテジー,1994年10月,123ページ〜132ページ)
[4]永名敦夫,リエンジニアリングの成功を約束する「アクティビティ分析」の実践的活用法,日経情報ストラテジー,(1995年2月,151ページ〜160ページ)